2017年12月16日土曜日

なぜMBAがキャリアシフトの役に立つのか

キャリアは40からでも再出発できる

今まで自分のやりたかったことが、
長年の仕事人生の過程で、新しいキャリアを志向したくなることが
さほど珍しいことではなくなってきました。

100年人生が当たり前になりつつあるなかで、
40歳は体力の衰えとともに今までのような若さからくる
勢いで乗り切るような仕事の仕方も当てはまらないですし、
50代、60代のような貫禄もない中途半端な時期かもしれません。

しかし、これから70、80まで仕事をしていくとなると、
残りもう半分くらいの時間をキャリア形成に費やせることになります。

同時にまわりの環境の変化が一層激しくなっている時代ですから、
同じような仕事で30年、40年もできないかもしれません。
そうなると社会が必要としている仕事に適応するために、
自身の成長も加速していかなければ人生の満足度を
最大化できないのかもしれません。

このような状況の中で、これからはキャリアを
全く別の生業にシフトしることがより焦点を浴びてくるでしょう。
キャリアシフトは、単なる転職活動ではありません。
冒頭で紹介した「ライフシフト」のグラットン教授が指摘するように、
古いペルソナから新しいペルソナへ変換していく過程で
自分の選択肢を広げてくれるアイテムが、次にあげる3つの変革資産:
1)Self-knowledge(自己認識)、2)Diverse network(多様なネットワーク)
3)Openness to new experience(新しい経験へのオープンマインド)です。

キャリアシフトの本質

そして、実際に新しいキャリアへ自分自身を変革させたいと思った場合に、
目標に向かって直線的に向かうことは難しいことです。
むしろトライ&ラーンで試行錯誤を繰り返しながら、
最終的な到達点は、当初思い描いていた、なりたい自分とは
異なるキャリアへと到達することもよくあります。
この理想と現実とが交わる場所が、
いわゆる古いペルソナ(今までのキャリア)と
新しいペルソナ(志向しているキャリア)との和解点となります。

また、キャリアへの捉え方も40代では変わってくるとお話ししました。
自分が何になりたいかというよりも、他者へどう貢献したいかという
他者への思いが増してくるので、このような志向に適した転職を考えると、
経験してきた産業や専門性に左右されない課題解決型のポジションが
向いているのだとおもいます。

そして、精神的成長としての他者への思いや
新しいペルソナを醸成するのが、MBAのような越境学習の機会なのだとおもうのです。
これらの関係性を図にしてみましたのでご覧ください。




キャリアシフトを行わず、現状のスペースで精神的成長をしていく場合は、
異動や昇進などでも実現できますが、そこに新しいペルソナを加味した場合には、
MBAなどの越境学習や和解の時間が必要となります。
そして、それぞれの要素が重なりあう中心こそが
理想の転職(キャリアシフトとしての)スペースになってくるのです。

精神的成長や新しいペルソナを形成する越境学習は、
変革資産の3)新しい経験へのオープンマインドに該当します。
そして、新しいペルソナ、古いペルソナなどの自己認識は
1)の部分といえるでしょう。
最後に残る変革資産2)の多様なネットワーク=特に仕事限らない“人的つながり”が、
和解の仕方をユニークなものにするエッセンスとなるでしょう。

キャリアアップが全てではない

最後に、私がなぜ40代のキャリアシフトをテーマに書きたかったかというと、
転職についての市場やどのようにキャリアを「アップ」させるかの
ハウツー本は多く出回っていますが、
私がお話ししてきたような、全く新しい仕事をやりたいと思ったときに
参考になるような本はほぼ見当たらなかったからです。

やっと昨年(2016年)くらいから、
100年人生のライフシフトというコンセプトが広がりをみせ、
長いキャリアを同じ仕事、同じ会社で送るという選択肢の他に、
より自分の関心事に近づける努力をしたり、
そのために足りない知識を補足しに復学したりすることが
頻繁に行われるようになってきました。

日本ではまだまだ定年まで勤めあげて年金暮らしという
「昭和のすごろく人生」が主流のようですが、
反面、人生の全てを会社に捧げるような時代ではなくなってきています。

企業が選ぶのではなく、
私たち一人一人が企業を、仕事を、長いキャリアの一部として選んでいく時代です。

ここで、なぜキャリアチェンジと言わず、
あえてキャリアシフトと言ってきたかというと、
チェンジでは、時間的に瞬間的であり、
すっかり変わっている状態を意味するからです。
しかし実際は、私の転職経験でもわかるように、
瞬間的にすっかり変身できることではありません。
時間的にもう少し緩やかな「移行する」という意味合いのある
「シフト」という言葉のほうがしっくりきます。

よくエクザキュティブ級の転職エージェントが、
収入アップの秘訣のようなことをこれ見よがしに語っていますが、
収入がその人の幸福感に貢献するのは、たったの10%に過ぎません。

前著「40からのMBA留学」でも指摘しましたが、
下記のパイチャートは、ポジティブ心理学の有名な研究結果で、
多くの研究者から引用されている内容です。


持続的な”Happiness”をもたらしてくれる源泉は何かを
数年かけて多くのサンプルからデータを集めた結果、
状況の変化(金持ちか貧乏か、有名か有名でないか、見た目が良いか悪いかなど)が
その人の幸福感に違いをもたらすのは、たったの10%だったということです。

実は、5割が親から引き継いだもの(遺伝的性向)で、
まわりの状況に対するとらえ方が、悲観的か楽観的かで、
皆さんの幸福感のほぼ半分が決まってくるのですが、
残りの4割は自分の意図的な活動が貢献しているのです。

5割はどうすることもできない領域だとすれば、
私のこれまでの議論は、この4割の部分
いかに新しいペルソナと和解できるスペースへシフトしていくかという
意図的な活動をする部分でした。

キャリアアップの話などは、表層部のいわばどうでもよい話であり、
ポジションが高いとか、重要な役職であろうと、
そこで自分がやりたいことが出来なければ、
幸福度全体でみればたったの1割での話です。

ですから、あたかもエクザキュティブこそ万人が目指すべき素晴らしきキャリア
のような謳い方は、私たちの多様なキャリア観を無視していますし、
誰もが欲しがっているという幻想の押しつけだといえるでしょう。
逆に言えば、キャリアダウンだって長い人生のなかにあってもいいはずですし、
自己の成長を基軸にしたアップというのも勿論あるのでしょう。
ただ、もっと根本的なキャリアの在り方についてよく議論したうえで、
キャリアアップやキャリアダウンも語られるべきではないでしょうか。

そして、MBAが役に立たないわけがない

40代でMBAを経て、普通のサラリーマンである私が
何を考え、感じ、どう変わったのかを
転職というイベントを通して綴ってきましたが、
100人のMBAホルダーがいれば、100様のストーリーがあるのだとおもいます。

一概にMBAホルダーは、素晴らしいキャリア人生を送っている
とは言えないですが、ひとつだけ共通して言えるのは、
物事のとらえ方がクールになります。

クールとは、客観的であり、複眼的であり、俯瞰的であることです。
また、学んだこと以外に、MBAで知り合ったクラスメートのとつながりあります。
そして、未知の課題に挑戦することで、
オープンなマインドセットを鍛えることもできます。

つまるところこれらは、自分自身を成長させるのに必要な変革資産なのです。
ですから、「MBAは本当に役に立つのか」という問いかけに対して
あらためてお答えするとしたら、「役に立たないわけがない」となるでしょう。

私の話はここまでにして、
次回からは、私以外のMBAホルダーが
どのようにキャリアシフトを遂げているかを
インタビュー形式でご紹介したいとおもいます。

参考文献

Lyubomirsky, S., Sheldon, K.M. & Schkade, D. (2005), 'Pursuing happiness: The architecture of sustainable change', Review of General Psychology, vol. 9, no. 2, pp. 111-131.