2015年7月28日火曜日

人事評価が社員をダメする理由!?


つい最近、日経の記事でFinancial Timesからの投稿を読んでいたら、
アクセンチュアのCEOがこれまでの年次評価システムが
評価に費やす200万時間が無駄だったと反省し、
評価システムを廃止すると発表したそうだ。

実は、社員の成績を点数ではじき出すこの評価システムが、
ほとんどの社員に対してモチベーションを下げる働きをしていると
脳科学の分野からサポートするデータが続々と出ている。

特に数字で社員を評価し、ランキングで競わせるシステムにすると
社員たちの脳内では、プレッシャーによって闘争・逃走反応という感情脳
に理性がハイジャックされて
思慮分別のある行動や決断が出来にくくなるという状況に追いやられてしまう。


もう一つは、社員に間違った「学び」と「自己発達」のイメージを、
人事評価で与えてしまっているとのこと。というより遠のいていくと言ったほうが正しい。

成績が良ければ、「出来る人」というレッテルが、
逆に大きな失敗から学ぶチャンスを剥奪していると言えないだろうか。
皆、成績評価のために失敗を恐れ、クリエイティブなアイデアや実験的試みより
自分の立場をセーブするために、現状維持やいかにまわりの同僚よりうまくやるか
ということに注目が行ってしまっている。

今までの自分の器を壊して
新しい可能性にチャレンジして得られるような本物の「学びと成長」を
阻むものに他ならないのが、現状の評価システムだと。

こちらの動画が面白いので、英語の勉強がてら見てほしい。

HOW YOUR BRAIN RESPONDS TO PERFORMANCE RANKINGS



”Only one person feels neurologically rewarded by the PM exercise:
 the senior executive who oversees it.”

人事評価システムで、唯一、脳科学的に報われる人間は・・・
それを監督するエクゼクティブだけだ。

と、脳科学者の論文では言っている。
詳しくは、こちらのフルテキストがあるので、ご参照いただきたい。

Kill Your Performance Ratings



2015年7月26日日曜日

グローバル戦略論 Wal-Martの失敗に学ぶ。

余裕がない今学期

今学期は、かなりアサイメントをこなすのに追われる毎日で
ブログを書く余裕がなかった。

前学期までは、早め早めに課題をこなすようにしていたので
課題の提出ギリギリまで論文を書いているということはなかったのだが、
思い返せば、それぞれ1日前ぐらいまでなんやかやと書いていたような気がする。

なぜかというと、エキストラワークで
エクザキュティブ・コーチングのトレーニングコースを受講したから。
こちらは、大学の授業ではなく、Institute of Executive Coaching and Leadershipという
オーストラリアでは知名度の高いビジネス・コーチングの機関で
3日間のインテンシブ実践講習とその前後1週間の
e-learning+アサイメントをプラスでやっていたので、
本業が少し後回しになってしまったのが大きな理由だ。

International Business Strategy

ビジネス・コーチングの話はまた別の機会にお話しするとして
今回は、今学期とったInternatinal Business Strategy(IBS)で学んだことを書きたいと思う。
IBSでは、グローバル戦略を計画するにあたってどのような考え方にもとづいて
検討していったらよいかということを
実際のグローバル企業をケーススタディとして分析しながら学んでいった。

ケーススタディとして20企業以上(日本企業も多々あり)の事例を学んだと思うが、
そのなかで各自課題がふたつ与えられた。
ひとつは自分でリサーチして結果をまとめる課題、
もう一つはグループでリサーチして結果をまとめる課題のふたつがあった。

それぞれ論文形式で提出するほかに、プレゼンを5分づつしなければならなかったので、
論文以外の準備などで思ったより時間がかかってしまった。

各自の課題で私が選んだのが、Wal-Mart。

Wal-Martの優位性

Wal-Martは、ご存知の方も多いと思うが、
アメリカが本拠地のメガディスカウント・スーパーマーケットで
世界27か国で展開する多国籍企業だ。

2014年の売上高は、482億USドル(5兆7,840億円/1ドル120円換算)
フォーチュン500社でExxon Mobilを100億ドル以上抜いて売上高No1というのは驚き。
因みにアップルは第五位。

どれだけ巨大な企業かというと、
ノルウェーのGDPに匹敵するほどの売上をあげているといえばなんとなくわかるだろうか。

ウォルマートの海外進出のパターンは、
自国のスタイルをそのまま他国に投影させてクローンのような企業をつくりだす
インターナショナル・プロジェクターというタイプの多国籍企業のようだ。

他国に進出するときに考えなければならないのは、
自国で築きあげたコアコンピテンシーがどれだけ移行可能かということ。
Wal-Martの場合、ふたつのFirm-Specific Advantage(FSA=企業特有の優位性)がある。

1)Every Day Low Price(EDLP):
 エブリデイ・ロープライスという低価格を常に確保して顧客にいつ行っても安いという
 イメージを与えるような戦略で、基本的には目玉商品のセールなどで呼び込みをしない。

2)ウェアハウスを中心に効率化された配送システムで、配送コスト、インベントリーコストを
 最小限に押さえる戦略。

このふたつを他国でいかに早く浸透させるかが、Wal-Martの最大の関心事なので、
進出する国にすでに卸業者や小売業者のロジスティクスが確立されているところでは、
全国規模で展開している小売り業者をM&Aで獲得、
一気にエブリデイ・ロープライスをその子会社に導入するかたちをとっている。

ドイツ進出での失敗

ここで興味深かったのは、1997年にドイツ進出したのが失敗して8年で撤退した事象だ。
全国規模のスーパーマーケット2社を子会社化してスタートしたのはよかったが、
商習慣の違いや顧客の嗜好、法規制などで、
Wal-Martの優位性をことごとく発揮できずに撤退してしまった。

なぜ撤退せざるを得なかったを分析するのが、今回の課題だったのだが、
大きな問いかけとして
「Wal-Martの重要な優位性は、どれだけ移転可能だったのか?」ということ。

結論から言うと、他国で調達しなければならない、
または培わなければならない優位性がほとんどで、
他国との文化や法規制、経済状況などの違いが大きいほど、
移転するのが難しいのだが、そのローカルで培うべき優位性を軽視していたようだ。

Ghemawatは、進出する国と自国との違いをdistance(距離)ととらえて、
4つの側面からこれらの違いを明らかにしたらどうかと提案している。
その四つの側面とは・・・

1)cultural dimension(文化的側面)
2)administrative dimension(法的側面)
3)geographical dimension(地理的側面)
4)economic dimension(経済的側面)

それぞれの側面からドイツのWal-Mart進出で何が起きていたかを分析すると次のようになる。

文化的側面

ドイツでは、労働組合の力が強く、
アメリカの経営者優位の経営がなかなか難しい状況だった。
組合の意向も踏まえた経営が望ましかったのだが、
アメリカ式を押し通したため、従業員とのコミュニケーションがうまくとれなかった。

当時、全く別の2社を子会社化したため、
本部が2か所あったのだが、それを一か所に集約する過程で、
一方の重役幹部たちをもう一つの本部へ異動させようとしたのだが、
地元から離れて移動させられるという習慣がなかったらしく、
業界に詳しく有能な幹部たちが軒並み辞めていった。

EDLPの他に、従業員のサービスに定評があったWal-Martだが、
顧客が10フィート圏内(3m)に来たらスマイルして歓迎するという
10フィートルールをドイツの従業員にも徹底させたところ、
侮辱されたと間違われてドイツでは不評だったそうだ。

その他、スタッフが商品の袋入れを手伝うサービスを行ったが、
ドイツではそのような習慣がなく、別途費用を請求されるサービスだと間違われてしまった。

法的側面

ドイツでは、ゾーニング規制があり、
Wal-Martが得意とする大規模店舗がそう簡単に建築できないようになっていて、
スケールメリットによるコストダウンができなかった。

店舗の営業時間に対しても規制があり、
自国のような24時間営業ができず、
こちらも規模の経済による優位性を確保できなかった。

フェアトレード法によって、商品の生産コスト以下の値段を付けてはいけないことになっていて、
こちらも競合他社との値下げ競争で勝つための戦略として
商品によっては生産コストよりも低い価格でうる方策が取れず苦戦。

地理的側面

子会社のロジスティクスの要となる配送拠点が
南方面の店舗から500Kmも遠い位置にあり、効率的な配送システムが確立できなかった。

経済的側面

ドイツでは、ALDIのように小規模だが、住民がアプローチしやすい
近隣に多くの店舗を配置して、商品数を限定することで扱う商品は大量に買い付けて
低価格を実現するという手法を取っている。
Wal-Martのように大規模な店舗で大量商品を低価格で供給するとなると
大型の店舗と長い営業時間で商品の回転数をあげるしかなくなる。
低価格競争が激しいなか、Wal-Mart式の優位性では、
全く違う形で低価格を実現している他店舗に太刀打ちできなかった。

顧客の日用品の価格に対する目も厳しく、
ひとつの店舗に行って買い物するのではなく、
それぞれの商品で安いところを見つけてそれぞれの店に買いに行くほど
日用品の価格には厳しかったようだ。


海外進出にもしっかりした長期的戦略が必要

結局、新天地を求めて海外に進出しても、これらの局面が持つdistanceを
補う努力とそれに伴うコストを軽視していると、大失敗するということだ。

Wal-Martのリサーチをして実は初めて知ったのだが、
2002年から西友ストアがWal-Martの傘下だったとは、全く知らなかった。

昨年のアニュアルレポートを見ると、採算がとれない30店舗を閉鎖して、
前年比15億USドルのマイナスを計上していて海外組として西友はかなり苦戦しているようだ。

「カカクヤスク」の戦略はEDLPの日本版だと遅ればせながらであるが気づいた。

私も個人的に日本で西友を利用させてもらっていたが、
安かろう悪かろうの世界で、地元のスーパーに寄れないときだけ
買い物するくらいだったように思う。
基本的には、生協の宅配を利用して、ほとんどスーパーへは買い物に行かない。
私たちのようにスーパーで過ごす時間が勿体ないと思う世帯が多くなっている。
オンラインショッピングと宅配をやり始めたようだが、ネットがない時代から始めた
生協や有機農産物宅配業者に勝てるだろうか?

これから、日本は三人に一人が65歳以上の高齢者になる時代に
身体の健康や生活の質にこだわるセグメントが増えるなか、
価格よりも新鮮さや健康志向、国産、地元産を優先するのではないだろうか。

いろいろなセグメントがあるので一概には言えないが、
マクドナルドの売り上げが下がっているのは、
安いファーストフードでも充分だというセグメントが
少なくなっていることもあるのではないだろうか。

税金回避地を使っていたり、メキシコで政府への賄賂に幹部が関わっていたり、
やっぱり「安かろう悪かろう」の世界版か、と思わざるを得ない・・・

引用文献

Verbeke, A. (2013), International business strategy: rethinking the foundations of global corporate success, Cambridge University Press, Cambridge. 

Sethi, P. (2014), 'The Wal-Mart affair - where implausible deniability is the coin of the realm', Corporate Governance, vol. 14, no. 3, p. 424. Available from: ProQuest Central. 

Ramakrishnan, S. (2015), 'Wal-Mart uses tax havens to cut taxes on foreign units -advocacy group', Reuters News Website, 17 June,  Accessed: 24 June 2015